食品の、いわゆる“異臭”といわれるにおいのひとつとして、かび様のにおい(かび臭)が挙げられる。かび臭の原因物質には様々なものがあるが、中でも、2,4,6-トリクロロアニソール(2,4,6-TCA)は、においの閾値(人がにおいを感じることのできる最小量)が非常に小さいため、異臭の原因物質になることが多い。過去に2,4,6-TCAを含む、ペンタクロロアニソールや2,3,4,6-テトラクロロアニソールなどのクロロアニソール類が、鶏小屋のおがくずに認められ、また鶏肉や卵の異臭を引き起こしていることが明らかにされた*1*2。2,4,6-トリクロロフェノール(2,4,6-TCP)は2,4,6-TCAの前駆体としてよく知られており、2,4,6-TCP存在下で、ある種の微生物が2,4,6-TCPをメチル化し、2,4,6-TCAが生成するといわれている*3。2,4,6-TCA は食品のかび臭汚染の原因物質となることから、汚染対策のための様々な取り組みがなされている。2,4,6-TCAの生成が2,4,6-TCPに起因することを考えると、2,4,6-TCPについて知ることは重要である。今回は2,4,6-TCAの前駆体としての2,4,6-TCPについて解説する。