食品中の残留農薬分析は、食品ごとに検査部位が規定されている。残留基準値と比較する分析値は、規定された検査部位を試料として分析した値でなければならないため、検査部位の確認は非常に重要である。平成30年9月に残留農薬分析におけるカカオ豆の検査部位が改正された。本稿では、残留農薬分析におけるカカオ豆の検査部位について説明する。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第二理化学検査室
食品中の残留農薬分析は、食品ごとに検査部位が規定されている。残留基準値と比較する分析値は、規定された検査部位を試料として分析した値でなければならないため、検査部位の確認は非常に重要である。平成30年9月に残留農薬分析におけるカカオ豆の検査部位が改正された。本稿では、残留農薬分析におけるカカオ豆の検査部位について説明する。
カカオ豆はチョコレートやココアの主原料で、カカオの果実中にある種子である。カカオ豆の可食部は、ニブと呼ばれる種子の外皮を取り除いた部分であり、専用の選別機等で外皮を除去する必要がある。国内で消費されているカカオ豆のほとんどが輸入品であるが、検疫所における輸入検査において残留農薬が基準値を超過する事例があり、一部の国から輸入されるカカオ豆は、2019年2月28日現在においても命令検査対象の項目がある。
従来、食品衛生法におけるカカオ豆の検査部位は『豆』であり、外皮を含めて調製した試料について検査を実施し、基準値の適否を判断してきた。しかしながら、可食部は外皮を取り除いた部位であること、また、EU諸国では外皮を除去した試料において検査を実施している背景を鑑み、カカオ豆の検体は原則として『外皮を除去したもの』に改められた。カカオ豆の構造を図1に示す。
カカオ豆をフードカッターやカッティングミルを用いて、出来るだけ粉砕して細粒化した後、風力選別機(図2)を用いて風力により低比重の外皮と高比重のニブに選別する方法が示されている。調製時の留意事項は、ニブは 50%を超える油脂分を含むので、発熱によるペースト化や、粉末が出たりしないよう注意しながら粉砕する必要があること、また、外皮の除去に当たっては農薬等の損失を防ぐために非加熱で処理することである。