高温細菌は、一般的に55℃以上の温度で増殖する細菌を指す。表1に、主な高温細菌の増殖温度範囲を示す。高温細菌は常温では増殖しないので、普段は問題となることは少ないが、ホットベンダーによる50~60℃で加温販売されるコーヒー缶詰やしるこ缶詰などで問題となった事例がある。
表1 主な高温細菌の増殖温度範囲
食品衛生法における清涼飲料水の製造基準を表2に示す。加熱殺菌条件は大きくpHによって区分されている。微生物の中にはこのような条件でも死滅しない細菌も存在し、Geobacillus stearothermophilusや、Clostridium thermoaceticumのように極めて耐熱性の強いものも知られている。缶詰の変敗原因の多くは殺菌不足か、密封不良による殺菌後の二次汚染によるものである。
変敗事例として、Clostridium thermosaccharolyticumは好熱性嫌気性変敗を起こし、CO2、H2ガスにより容器を膨張させる。Desulfotomaculum nigrificansは硫化変敗を起こし、容器の膨張はないが、内容物を変敗させ硫化水素臭、黒変を引き起こす。Geobacillus stearothermophilus は容器の膨張はないが、内容物を酸敗させるフラットサワー変敗を起こすことが知られている。
表2 清涼飲料水注1)の製造基準
注1) ミネラルウォーター類、冷凍果実飲料(果実の搾汁又は果実の搾汁を濃縮したものを冷凍したものであって、原料用果汁以外のものをいう。)及び原料用果汁以外の清涼飲料水