カルシウムについて

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

第一理化学検査室

1.はじめに

カルシウム(calcium)は、原子番号20、元素記号Ca、アルカリ土類金属の一つである。ヒトの体重の1~2%を占め、そのうち99%は骨及び歯に存在し、骨の主要構成要素の一つである。組織内には微量しか存在しないが、細胞の多くの働きや活性化に必須の成分である。また、カルシウムは、血液の凝固に関与しており、血漿中の濃度は一定に保たれている。成長期にカルシウムが不足すると成長が抑制され、成長後不足すると骨がもろくなるため全てのヒトにおいて必須性が認められているミネラルの一種である1)

2015年に施行された食品表示法において、カルシウムは、栄養成分表示の義務項目には設定されていないため、商品のパッケージに表示する義務はない。ただし、カルシウムが豊富に含まれている旨や他の商品に比べて多い旨など、カルシウムについて強調して表示する場合(強調表示)は、必ず分析値を表記する必要がある。強調表示は、分析によって得られた値を表記する必要があり、その際には、成分毎に定められた基準を満たしていることが重要となる2)、3)。上記のように、カルシウムは、栄養成分表示の義務項目ではないが、我々がよく目にする感覚を抱くのは、強調表示によるものが多い。

また、消費者庁のWebサイトで公開されている「平成30年度食品表示に関する消費者意向調査報告書 設問36.「あなたが必ず表示(義務表示に)してほしい、栄養成分名をお答えください。」では、全体の9番目と食物繊維の次に関心が高い栄養成分であることがわかる。また、ミネラル成分の中ではナトリウムに次いで2番目であり、特に高齢女性に注目されている4)

2.分析方法

カルシウムの分析方法は、「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」(以下、食品表示基準の方法)や「日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル」に収載されている。

その中で、食品表示基準の方法に収載されているカルシウムの分析方法は、3種類ある。1つ目は、濃度既知の過マンガン酸カリウムを用いて、その滴定された量からカルシウム含量を求める「過マンガン酸カリウム容量法」である。2つ目は、試料を灰化後、残った灰に塩酸を加えて溶解(乾式灰化法)し、得られた液を試験溶液として原子吸光光度計を用いてカルシウム含量を求める「原子吸光光度法」である。3つ目は、原子吸光光度法と同様に乾式灰化法によって得られた液を試験溶液として誘導結合プラズマ発光分析装置を用いてカルシウム含量を求める「誘導結合プラズマ発光分析法」である。以下に、一例として、誘導結合プラズマ発光分析法の操作フローを図1に示す。なお、原子吸光光度計と誘導結合プラズマ発光分析装置の測定方法の特徴は、弊財団メールマガジン「食品に含まれる有害元素の分析とその精度管理①(2015年7月発行)」http://www.mac.or.jp/mail/150701/04.shtmlを参照されたい。

図1 誘導結合プラズマ発光分析法の操作フロー

注意点

試験溶液中の塩濃度が高い場合は、発光強度の低下が認められるので希釈するか標準溶液の元素組成を試験溶液と近似させる必要がある。

3.おわりに

カルシウムは、前述の消費者意向調査報告書でもわかるように消費者にとっては関心の高い成分である。

一方で、サプリメントやカルシウム剤の形で摂取する際には、ビタミンD剤との併用時に、ビタミンDによってカルシウムの吸収が促進され、より少ない摂取量でも血清カルシウムが高値を示すことがあるため、注意する必要がある。

カルシウムの過剰摂取は、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などを生じる可能性がある5)

近年、機能性表示食品においてもカルシウムの機能性を取り上げた食品が届出されており、今後は、その動向にも注目されたい。

参考文献

1)

日本食品標準成分表 2015年版(七訂)

文部科学省

2)

食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)

消費者庁

3)

<事業者向け>食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第2版(平成30年5月)

消費者庁

4)

平成30年度食品表示に関する消費者意向調査報告書

消費者庁

5)

日本人の食事摂取基準(2015年版)報告書

厚生労働省