カリウムは野菜類、果実類をはじめ、広く食品に含まれており、私たちの食生活に非常に関わりがあるミネラルの一種である。カリウムは、ナトリウムとともに細胞の浸透圧を一定に保つ働きなどがあり、私たちの生命維持活動の上で重要な役割を担っている。本稿では、カリウムの特徴と分析方法について解説する。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第一理化学検査室
カリウムは野菜類、果実類をはじめ、広く食品に含まれており、私たちの食生活に非常に関わりがあるミネラルの一種である。カリウムは、ナトリウムとともに細胞の浸透圧を一定に保つ働きなどがあり、私たちの生命維持活動の上で重要な役割を担っている。本稿では、カリウムの特徴と分析方法について解説する。
カリウムは、原子番号19、元素記号Kのアルカリ金属の1つである。細胞の浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経の働きを保つなどの重要な役割があり、私たちにとって必要不可欠なミネラルである。
カリウムは野菜類、果実類、豆類、芋類、魚類、肉類など広く食品に含まれており、通常の食生活で不足になることはほぼない。また腎機能が正常であり、カリウムを含むサプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取にならないと考えられている。日本人の食事摂取基準(2015年版)では、カリウム摂取の目安量と目標量を設定している。目安量は、一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、現在の日本人の摂取量を考慮した値である。目安量以上摂取していれば不足のリスクはほとんどないと考えられている。目標量とは、高血圧等の生活習慣病の予防を目的に、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量のことである。カリウム摂取の目安量は、18歳以上の男性では1日2500 mg、18歳以上の女性では2000 mg、目標量は、18歳以上の男性では1日3000 mg、18歳以上の女性では2600 mgと設定されている。
血液中のカリウム濃度は通常3.5~5.0 mEq/L(mEq/L:溶液1リットル中の溶質のミリ当量数)の範囲内にあり、血液中のカリウム濃度が3.5 mEq/L以下の状態を「低カリウム血症」 、血液中のカリウム濃度が5.5 mEq/L以上の状態を「高カリウム血症」という。低カリウム血症は、嘔吐、下痢、副腎の病気、利尿薬の使用などが原因で起こると考えられており、症状としては、脱力感、筋力低下、食欲不振、骨格筋の麻痺などがある。高カリウム血症は、腎機能の低下により、カリウムが尿中に排出されにくくなるなどが原因で起こると考えられており、症状としては、脱力感、しびれ、重篤な場合は心停止に至ることもある。腎機能が低下している場合は、高カリウム血症となる場合もあるので、カリウム制限を行い、摂取量に注意する必要がある。近年、低カリウムを謳った食品の販売や研究も盛んに行われており、低カリウム野菜などが市場に出回っている。低カリウム野菜は、通常の野菜よりもカリウムを低減させてあるため、カリウム制限が必要な人々でも、生野菜を食べられるということで注目されている。
「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に、カリウムの分析方法が記載されている。前処理方法として、塩酸抽出法と灰化法の2種類、測定方法として、原子吸光光度法と誘導結合プラズマ発光分析法の2種類がある。
塩酸抽出法は、試料を抽出容器に採取した後、希塩酸を加えて振とうし、得られた抽出液を試験溶液とする方法である。脂質含量の高いもの、水に分散しづらいもの、粘性があるものは抽出不足になりやすく、塩酸抽出法は適さない。灰化法は、石英ビーカーに試料を採取し、電熱器上で予備灰化後、500℃の電気炉内で灰化する。残った灰に塩酸を加えて溶解し、得られた液を試験溶液と方法である。これらの試験溶液を原子吸光光度計あるいは誘導結合プラズマ発光分析装置で測定する。操作フローを図1に示す。原子吸光光度計と誘導結合プラズマ発光分析装置の測定方法や特徴は、2015年7月発行の「食品に含まれる有害元素の分析とその精度管理①」を参照されたい。
カリウムはイオン化干渉が起こりやすい元素であり、誘導結合プラズマ発光分析装置で測定する際は、イオン化干渉の影響を考慮しなければならない。イオン化エネルギーの低い元素が共存することで、分析元素のイオン化効率が変化し、発光強度に影響を及ぼす可能性があるからである。イオン化干渉を抑制する方法として、標準添加法やマトリクスマッチング法などがあり、これらの方法は、2015年8月発行の「食品に含まれる有害元素の分析とその精度管理② 」を参照されたい。
カリウムは、広く食品に含まれており、私たちの食生活に非常に関わりがあるミネラルの一種である。通常の食生活を送っていれば、過不足になることはあまりないが、腎機能が低下している場合などは摂取に関して注意が必要である。低カリウム食品も市場に出回っているため、今後も注目していきたい。