サイクラミン酸(シクロヘキシルスルファミン酸)は合成甘味料として、日本では1956 年から用いられてきた。水に溶け熱に強く、砂糖の数十倍の甘味度を有し、砂糖に似た快い甘味、果実などのフレーバーとの相性がよいとされるこの甘味料は“チクロ”とよばれ、加工食品業界で特に重宝された。しかし、ラットに膀胱がんを発生する疑いがあるとのアメリカの報告[1]を受け、1969 年にはアメリカに次いで日本でも使用が禁止された。このとき行政はサイクラミン酸が使用されているすべての製品の回収を指示したため、食品業界は混乱をきたし、また、国民の添加物への関心を高めるきっかけになったともいわれる。一方で、中国、台湾、EU諸国では当時から現在に至るまで甘昧料としての使用が認められており、サイクラミン酸を使用した食品が日本に輸入される可能性がある。そのためサイクラミン酸は指定外添加物として行政検査の対象であり[2]、2017年度においては、中国、台湾およびベトナムの対象製造者で製造された食品についての検査命令が指示されているほか、その他の国々からの輸入食品についても、モニタリング検査や自主検査が積極的に行われている。平成28年度の違反事例を以下に示す(表1)。続いてサイクラミン酸の試験法について解説する。