1)クロム
クロムは元素記号Cr、原子番号24の元素です。体内では糖質や脂質の代謝、たんぱく質合成に関与しており、たんぱく質分解酵素の一成分でもあります。クロムは様々な動植物性食品に含まれているため通常の食生活で不足する事はまずありませんが、欠乏すると耐糖能異常が起こり、長期にわたる過剰摂取では嘔吐、肝障害、中枢神経障害などが起こる可能性があります。またクロムの体内吸収率は0.5~2%程度と低く見積もられており、過剰摂取に至る可能性は低いと考えられています。
2)セレン
セレンは元素記号Se、原子番号34の元素で、体内では酵素やタンパク質の一成分として存在し、抗酸化反応において重要な役割を担っています。セレンは動物性食品、植物性食品いずれからも供給されますが、特に魚介類は優秀なセレン供給源となっています。セレンは通常の食生活で不足することはまずありませんが、欠乏すると過酸化物による細胞障害が起こると考えられており、低セレン地域である中国東北部に見られる克山病(心筋梗塞の一種)や中国北部やシベリアの一部に見られるカシン・ベック症(地方病性変形性骨軟骨関節症)などがセレン欠乏症として知られています。また、慢性的な過剰摂取により爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢などが起こる可能性があります。
3)モリブデン
モリブデンは元素記号Mo、原子番号42の元素です。体内では肝臓と腎臓に多く存在し、酸化還元反応を触媒するキサンチンオキシダーゼなどの補酵素(モリブデン補欠因子)として機能しています。食品では植物性の製品やレバーなどに含まれており、特に穀類や豆類には豊富に含まれます。日本人は穀類や豆類の摂取量が多い傾向にあるため不足する事はまずありませんが、欠乏すると頻脈や多呼吸などの症状が見られます。また、慢性的に過剰摂取すると関節の痛みや高尿酸血症などが引き起こされますが、モリブデンは摂取しても速やかに排泄されるため、健康な人では通常の食生活で過剰症が問題となることはほとんどありません。