サルモネラ属菌試験法(ISO 6579-1)について

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

微生物検査室

はじめに

サルモネラ属菌は腸内細菌科に分類される細菌で、感染型食中毒を起こすことが知られており、食品衛生上、最も重要な細菌の一種である。令和4年の月別病因物質別食中毒発生状況によると、細菌の区分において事件数はカンピロバクタージェジュニ・コリに続いて2位(22件)、患者数はウェルシュ菌、カンピロバクタージェジュニ・コリに続いて3位(698人)である。食中毒の主な媒介食品は食肉・卵・乳など畜産食品を中心に、魚類・野菜・鶏卵加工品など広範囲にわたる。

国内ではサルモネラ属菌の試験法のひとつとして、平成27年7月29日付け厚生労働省通知「食安発0729号第4号」(別添1)サルモネラ属菌試験法が知られている(2018年7月号豆知識)。この通知法は国際整合性を図る観点から、国立医薬品食品衛生研究所における試験法の検討結果をもとに作成されている。今回は通知法のもととなった試験法ISO 6579-1サルモネラ属菌試験法について、使用培地の違いを中心に紹介する。

試験法について

ISO 6579-1:2017は、人間の食品や動物の飼料、環境サンプルからのサルモネラ属菌の検出を目的とした試験法である。検出手順の概要は、試料採取後、前増菌培養→選択増菌培養→選択分離培養→生化学的性状確認の手順で行われる。

通知法とISO法を比較したフローを下図に示す。

 

前増菌培養

何れの試験法も試料を採取し、緩衝ペプトン水にて前増菌培養を行う。乾燥食品や冷凍食品中のサルモネラ属菌は、乾燥や加熱あるいは凍結など、食品の加工処理工程中に損傷を受けて、増殖力が弱くなっていることが考えられる。そのため、ISO法では予め34~38℃に保温した選択性のない緩衝ペプトン水を用いて前増菌培養後、選択性の高い菌培地を用いることで、サルモネラ属菌の検出率が高まることが期待される。

選択増菌培養

選択増菌培地に、通知法ではRV(ラバポート-バシリアディス)培地、TT(テトラチオネート)培地を使用するのに対し、ISO法ではRVS(ラバポート-バシリアディス-ソーヤペプトンブイヨン)培地、MKTTn(ミュラー-コフマン-テトラチオネートブイヨン)培地を使用する。

 

RVS培地とMKTTn培地の組成を以下に示す。

 

RVS培地は、高濃度の塩化マグネシウムの脱水作用により、乾燥に弱い大腸菌等の腸内細菌の発育を抑制し、さらにマラカイトグリーンの殺菌作用によりサルモネラ属菌以外のグラム陰性菌やグラム陽性菌は発育を抑制する等、サルモネラ属菌に対して高い選択性を有する増菌培地である。

MKTTn培地は、基質にペプトン(カゼイン酵素加水分解物)を含み、サルモネラ属菌の増菌を促進する。ヨウ素―ヨウ化物混合物とチオ硫酸ナトリウムの反応で得られるテトラチオネートを含有しており、多くのグラム陰性桿菌(サルモネラ属菌とプロテウスを除く)の細菌の増殖を抑制する。さらに、ブリリアントグリーン及び胆汁酸塩がグラム陽性菌の発育を抑制する等、RVS培地同様にサルモネラ属菌に対して高い選択性を有する増菌培地である。

選択分離培養

両方とも2種類の寒天培地を使用する。ISO法では、1つはXLD(キシロース-リジン-デオキシコール酸)培地、もう1つはBGA培地、CHS培地、BS培地、HE培地、SS培地等の19種類の培地から1種類を選択する。通知法では硫化水素の産生、非産生により判定するMLCB培地、DHL培地、XLD培地から1種類、硫化水素の産生、非産生によらず判定するBGS培地、CHS培地、ESⅡ培地、SM2培地から1種類を選択する。

本稿では、ISO 6579-1で必須とされているXLD培地について紹介する。

 

XLD培地の組成を以下に示す。

 

XLD培地は、キシロースの発酵、リジン脱炭酸および硫化水素の産生によりサルモネラ属菌を判別する。サルモネラ属菌は、硫化水素の産生によって、中心部が黒色のコロニーを形成するが、サルモネラ属菌以外の腸内細菌は、黄色のコロニーとなり、サルモネラ属菌との判別は容易にできる。

確認試験

選択分離培地上において、サルモネラ属菌と疑われる集落をTSI培地、リジン脱炭酸培地などに接種し、生化学的性状の確認を行う。さらに、抗 O血清による凝集反応により O 抗原の血清型別を実施してサルモネラ属菌と確定する。

まとめ

サルモネラ属菌は国内外で食中毒を引き起こしており、各国で基準が設けられている。サルモネラ属菌に対し適切な食中毒予防策を実施し、適切な検査を通じて、安全、安心を確保しつつ、サルモネラ食中毒をはじめとした食中毒事例が増えないことを願う。

なお、弊財団では、ISO/IEC 17025の認定範囲を拡大し、新たにサルモネラ属菌(ISO 6579-1)についても認定を受けた(認定番号:RTL02620)。

参考資料

1)
ISO 6579-1:2017
2)
ISO 6579-1:2017 Amendment 1:2020
3)
平成27年7月29日付け厚生労働省通知「食安発0729第4号」
4)
国立医薬品食品衛生研究所ホームページ
「サルモネラ属菌標準試験法 NIHSJ-01-ST4」
http://www.nihs.go.jp/fhm/mmef/pdf/protocol/NIHSJ-01_ST4_rev03.1.pdf
5)
厚生労働省ホームページ 4.食中毒統計資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
6)
http://products.sysmex-biomerieux.net/product/pdf/42114D.pdf
7)
栄研マニュアル 栄研化学株式会社
8)
OXOID The Manual 関東化学株式会社