たんぱく質について

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

第一理化学検査室

1.はじめに

最近よく「高たんぱく質」「たんぱく質強化」を謳う食品を目にするようになった。この背景には2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大による健康意識の高まりや、在宅時間の増加によるコロナ太り解消のために身体づくりをする人が増えたことなどが挙げられる。その生活の変化に合わせて、サプリメントだけでなく、サラダチキン、パン、即席めん、乳製品、菓子類など様々なたんぱく質補給食品が登場し、これらを近くのスーパーやコンビニで気軽に手に入れることができるようになった。さらに、たんぱく質を含め、必要な栄養素がバランス良く摂取できる栄養食なども登場し、健康志向は増々高まっている。本稿では近年のトレンドである栄養成分たんぱく質について解説する。

2.たんぱく質とは

たんぱく質は人が生きるうえで欠かせない三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)のひとつであり、炭水化物や脂質と並んで体を動かす大切なエネルギー源である。人体は水分70%、たんぱく質15~20%、その他、糖質、脂質、核酸などで構成されており、たんぱく質は人の生命維持に欠くことができない栄養成分であることがよくわかる。

たんぱく質は人体の骨格、臓器、皮膚、筋肉、爪、髪の毛などを構成する主要な組織を構成する要素であり、体内のホルモン、酵素、抗体などの材料として生命活動の多くを担っている。たんぱく質は20種類のアミノ酸が多数つながって構成される高分子化合物であり、アミノ酸には「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」の2種類がある。必須アミノ酸はバリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンの9種類で、人体で合成することができないため食事から摂取する必要がある。一方、非必須アミノ酸はグリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリンの11種類で、人体で糖質や脂質から合成することができる。また20種類のアミノ酸のうち、どれか1つでも不足するとたんぱく質を構成することができないため、バランスのよい食事を心掛けることが大切である。

3.たんぱく質の必要摂取量

身体をつくる栄養素であるたんぱく質は必要量を十分に摂取する必要がある。その必要量は性別、年齢、妊娠期、授乳期等によって異なり、厚生労働省が示す「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に詳細が示されている。たんぱく質の1日あたりの摂取量は、成人男性で60~65g、成人女性で50gが、大部分の健康な人が不足しない量である推奨量とされ、1日の摂取エネルギーの概ね13~20%を目標量とすることとなっている。これらを満たすためには、動物性たんぱく質を含む肉、魚、卵、乳、乳製品などと植物性たんぱく質を含む米、パン、麺などの穀物類を3食バランス良く摂取するのが望ましい。また、忙しく栄養が偏った食事をした日には、サプリメントや栄養補給食品を活用することが良いとされる。

4.たんぱく質の分析方法

「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)別添 栄養成分の分析方法等」に記載されているたんぱく質の分析方法について解説する。

食品中のたんぱく質の定量方法では、全窒素を定量し、それに一定の係数(窒素・たんぱく質換算係数)を乗じたものをたんぱく質量とする窒素定量換算法が示されている。窒素・たんぱく質換算係数は、食品の種類によって構成するアミノ酸が異なるため、それぞれに応じたものを用いる必要がある(表1)。また、表1に記載されていない食品に関しては、通常たんぱく質の窒素含量が約16%であることから、一般的には換算係数6.25(100/16)を用いる(詳細は、上記通知を参照いただきたい)。

表1 窒素・たんぱく質換算係数

食品名 換算係数
アーモンド 5.18
アマランサス、ナッツ類(アーモンド、ブラジルナッツ、らっかせいを除く)、種実類(あさ、えごま、かぼちゃ、けし、ごま、すいか、はす、ひし、ひまわり) 5.30
ブラジルナッツ、らっかせい 5.46
ふかひれ、ゼラチン、腱(うし)、豚足、軟骨(ぶた、にわとり) 5.55
小麦粉、フランスパン、うどん・そうめん類、中華めん類、マカロニ・スパゲティ類、ふ類、小麦たんぱく、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮 5.70
だいず、だいず製品(豆腐竹輪を除く。)、えだまめ、だいずもやし、しょうゆ類、みそ類 5.71
小麦(はいが)  5.80
オートミール、おおむぎ、小麦(玄穀、全粒粉)、ライ麦 5.83
こめ、こめ製品(赤飯を除く) 5.95
乳、乳製品、バター類、マーガリン類 6.38

 

窒素定量換算法としては、ケルダール法と燃焼法の2法がある。

ケルダール法は、まず試料に分解促進剤と濃硫酸を添加し加熱分解を行い試料中の窒素を硫酸水素アンモニウムに変換する。その後、この分解液に水酸化ナトリウムを加えアルカリ性にし、遊離したアンモニアを水蒸気蒸留してホウ酸溶液で捕集する。得られた蒸留液を硫酸で滴定し、滴定に要した硫酸の量から全窒素量を求める方法である

次に燃焼法は、試料を純酸素気流中で完全燃焼する。燃焼によって生じた燃焼ガスから妨害となるダストや水分、二酸化炭素を除去し、銅が詰められた還元管を通って窒素酸化物NOxから還元された窒素N?を熱伝導検出器にて検出する方法である。

燃焼法はケルダール法と比べて、濃硫酸のような危険な試薬を使用しないため安全であり、かつ、ドラフト等の大型設備を必要としないこと、短時間で測定できることが利点である。しかし少量の試料での分析となるため試料の均質化が重要となる。ケルダール法及び燃焼法の分析フローチャートを図1に示す。

図1 ケルダール法及び燃焼法の分析フローチャート

5.さいごに

たんぱく質は人体を構成する栄養素として欠かせないものであり、生きていく上で大切なエネルギー源である。自分の年齢や運動量に合わせた、たんぱく質の必要量を知りバランスの良い食事を心掛け、ときには栄養補助食品を摂取するなどし、健康で元気な身体づくりを目指していただきたい。

参考文献

 
厚生労働省 e-ヘルスネット, たんぱく質/アミノ酸
 
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
 
厚生労働省 食生活改善指導担当者テキスト ~健康教育編・栄養指導~(2021年3月)
 
消費者庁 食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)
 
(2018年9月発行)たんぱく質の分析方法ついて
 
(2015年9月発行)たんぱく質の検査方法 -ケルダール法-