ビタミンDについて

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

第三理化学検査室

【ビタミンDとは】

食品表示基準では、ビタミンDは、エルゴカルシフェロール(ビタミン D)及びコレカルシフェロール(ビタミン D)を定量の対象とし、両者を一括してビタミン D として定量すると定められている1)。ビタミンDは、ビタミン類のうち水に溶けにくく油に溶ける脂溶性ビタミンに分類される。ビタミンD及びビタミンDの構造式を図1に示す。

図1. ビタミンD及びビタミンDの構造式

ビタミンDは一般的に熱、光、空気酸化、酸に対し不安定であり、アルカリの環境下では安定とされている。ビタミンDは一般的には植物やキノコ類に含まれ、豊富な食品として、キクラゲや干しシイタケ、しめじなどが挙げられる。ビタミンDは一般的には魚介類に含まれ、豊富な食品として、しらす干し、真いわし、にしん、イクラなどが挙げられる2)

ビタミンDは食品から摂取するだけではなく、体内で合成することができる。我々の皮膚には7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD)と言われる物質が存在している。日光(紫外線)を浴びることでプレビタミンDに変化し、体温などの熱でビタミンDに変化する。ただ、屋内で窓越しに日光に当たってもビタミンDは生成されず、曇りの日、日陰にいる場合には皮膚によるビタミンD生成量を低下させる3)

【ビタミンDの効果・有効性】

ビタミンDの働きとして、一般的には、骨を強くすること、カルシウムとリンの吸収を助けること、血液中のカルシウム濃度を一定に保つことが知られている。他にも、筋肉を動かすため、神経が脳と身体のあらゆる部位との間のメッセージを伝達するため、免疫系が体内に侵入してくる細菌やウイルスを撃退するために不可欠である3)

戸外で適度に日照を受けることのできる生活をしている人では、通常、食事からのビタミンD摂取が不足してもビタミンD欠乏症はほとんど起こらない。しかし、日照時間の短い地方に住んでいる人や屋内での生活時間が長い高齢者では、ビタミンDの摂取不足により欠乏症が起こることがある4)。ビタミンDの摂取が少ないと骨が軟化し、細く、脆くなってしまう。症状が進むと「骨軟化症」、「骨粗しょう症」、新生児の「くる病」といった重大な疾病にも繋がる。ビタミンDは、特にカルシウムと密接な関係があることから加工乳、ヨーグルトなどカルシウムを含む食品に併用されることが多くある。

ビタミンDの摂取の目安量は18歳以上であれば8.5μg/日、耐容上限量は100μg/日と示されている5)。通常の食事や一般的なサプリメントの適正使用によって摂取されるビタミンDで過剰症が起こることは非常に稀である4)。しかし、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため過剰摂取にはリスクがある。ビタミンDを短期的、または長期的に過剰摂取すると、骨からのカルシウムの流出により、血液中のカルシウムとリン酸濃度が高くなり、腎臓や筋肉へのカルシウムの沈着や軟組織の石灰化が見られることがある。ほかの症状としては、嘔吐、食欲不振、体重減少などが起こることがある6)。そのため、カルシウム、ビタミンDを多く含むサプリメントの過剰摂取には注意が必要である。

ビタミンDは一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、定められた上・下限値(1.65μg~5.0μg/日)の範囲内にある場合に栄養機能食品として表示することができる。栄養機能食品とは、特定の栄養成分の補給のために利用される食品で、栄養成分の機能を表示するもの7)である。栄養成分の機能として「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です。」といった表示が可能である。

【ビタミンDの分析方法】

食品中のビタミンDの分析方法は、食品表示基準に示される方法が一般的である1)。ビタミンDの定量には高速液体クロマトグラフ法が用いられ、分取用と測定用の2台あったほうがよいとされている。

試料に塩化ナトリウム溶液、ピロガロール溶液、エタノール、水酸化カリウム溶液を添加し、けん化を行う。けん化終了後、塩化ナトリウム溶液、ヘキサン-酢酸エチル混液を添加し、振とう抽出、遠心分離後に有機溶媒層を回収する。回収した有機溶媒を留去し、定容した試料溶液をフラクションコレクターのついた高速液体クロマトグラフにより分取する。分取で得られた溶液を定容し、紫外可視検出器付き高速液体クロマトグラフにより測定を行い、値を算出する。ビタミンDの分析法フローチャートとクロマトグラムを図2及び図3に示す。

図2. ビタミンDの分析法フローチャート

 

図3. ビタミンDのクロマトグラム

【おわりに】

ビタミンDは、食品からの摂取だけではなく、日光(紫外線)を浴びることにより体内で合成できるビタミンである。キノコ類、魚類、卵、乳製品以外の食品にビタミンDはわずかにしか含まれていないため、適度に日光を浴びることは効果的である。普段の生活で日光を浴びる機会が少ないのであれば、食品から摂取することを意識することが大切になってくる。

今回はビタミンDについて解説したが、他にもビタミン類には、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ナイアシンなどの水溶性ビタミンとビタミンA、ビタミンE、ビタミンKの脂溶性ビタミンがある。他のビタミンの効果や有効性などにも関心を持っていただき、普段の食生活に意識して取り入れることが望ましいと考える。

参考文献

1)
消費者庁:食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号) 別添 栄養成分等の分析方法等
2)
文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂増補)
3)
厚生労働省:eJIM ビタミンD
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html
4)
公益社団法人 日本ビタミン学会:ビタミンQ&A(よくある質問)
https://www.vitamin-society.jp/qa/
5)
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
6)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:特定保健用食品/その他解説 ビタミンについての解説
https://hfnet.nibiohn.go.jp/vitamin/detail221/
7)
消費者庁:栄養機能食品について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_nutrient_function_claims/