VBN(揮発性塩基窒素)の試験法について

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

第一理化学検査室

1. はじめに

魚介類、畜肉などのタンパク質性食品では、食品の変質による鮮度の低下に伴い、アンモニア、トリメチルアミンおよび微量のジメチルアミンなど、揮発性塩基窒素(volatile basic nitrogen, VBN)を生成する。1) VBNは鮮度判定の指標によく用いられるが、一般的に次のような段階があることが知られており、特に初期腐敗の判定に有効である。2)

表1 VBN値と魚肉の鮮度判定

VBN値 鮮度判定
5~10 mg/100g きわめて新鮮な魚肉
15~20 mg/100g 普通の新鮮な魚肉
30~40 mg/100g 初期腐敗の魚肉
50 mg/100g以上 腐敗した魚肉

 

ただし、これらの値はあくまで目安であり、魚種ならびに部位によって値が大きく異なる場合もあるので注意が必要である。2) また、飼料品質表示基準(昭和51年農林省告示第760号)では魚粉中に0.3%を超えて、フェザーミールおよびフィッシュソリュブル吸着飼料中に0.6%を超えてVBNを含有している場合には、その旨の表示を義務づけている。3)4)

 

2. VBN試験法 ~微量拡散法~

微量拡散法はVBN試験法の一つであり、1925年イギリスのConwayらにより確立された。1)コンウェイ拡散器を用いて、試料をアルカリ性にしたときに発生する揮発性塩基窒素ガスを標準酸性液中に捕集して定量する。1)2)

本稿では、最新の食品衛生検査指針(2015、理化学編)に記載されていないが、一般的に用いられる方法の一つであり、一度に多数の検体を測定できる食品衛生検査指針(1991、理化学編)に示された試験法について紹介する。試験法のフローを図1に示す。

 

図1 微量拡散法の試験法フロー

 

1) 抽出

試料を細切し、その10 gを採取した後、水および20%トリクロロ酢酸溶液を加えてホモジナイズし、100mL容メスフラスコに洗い込み、定容してよく振り混ぜる。10分間放置後、ろ過し、ろ液を試験溶液とする。

 

2) 拡散操作

コンウェイ拡散器のふたの摺り部分に気密剤(ワセリンなど)を塗り、コンウェイ拡散器の上に置く。コンウェイ拡散器内室にメチルレッドおよびブロムクレゾールグリーンの混合指示薬を含むホウ酸吸収剤(以下、ホウ酸吸収剤)1.0mL、コンウェイ拡散器外室に試験溶液1.0mLをそれぞれ注入し、続いてコンウェイ拡散器外室に炭酸カリウム飽和溶液1.0mLを加えて密閉する。コンウェイ拡散器を水平方向に回して外室の溶液を混合し、一定時間放置する。試験中のコンウェイ拡散器の様子を図2-1~2-4に示す。

 

図2-1 コンウェイ拡散器

 

図2-2 コンウェイ拡散器のふたを開けたところ

コンウェイ拡散器外室には、試験溶液と炭酸カリウム飽和溶液がすぐに混合しないように仕切り(矢印)がある。

 

図2-3 拡散操作中のコンウェイ拡散器の様子(写真撮影のためふたを開けている)

 

図2-4 一定時間放置後のコンウェイ拡散器の様子

試験溶液から揮散したVBNにより、コンウェイ拡散器内室のホウ酸吸収剤が緑変している。

 

3) 定量

一定時間放置後、コンウェイ拡散器内室のホウ酸吸収剤を硫酸で滴定する。緑変しているホウ酸吸収剤が硫酸の注入に従いほとんど無色になり、次いで微桃紅色となった点を終点とする。

計算は次の式で行い、VBN(mg%)を求める

 0.28×(X-b)×f×100/0.1

  ※0.28は0.02Nの硫酸を用いて滴定した場合

  X:滴定量(mL)

  b:空試験値(mL)

  f:0.02N硫酸のファクター

  0.1:試験溶液1 mLに相当する試料量(g)

3. おわりに

本稿では、VBN試験法の一つである微量拡散法について紹介した。VBNの大部分はアンモニア性窒素であり、腐敗臭による異臭クレームにつながる恐れがある。消費期限・賞味期限設定にも活用できる指標であり、微生物検査やpHなど他の理化学検査と組み合わせて食品の品質管理にお役立ていただきたい。

 

参考文献

1)
衛生試験法・注解 2020 日本薬学会編
2)
食品衛生検査指針 1991 理化学編
3)
試料分析法・解説 2009 日本科学飼料協会
4)
独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)HP 飼料品質表示基準
https://www.famic.go.jp/ffis/feed/kokuji/k51n760.html