コレステロールは人間など高等動物の細胞に存在する脂質であり、細胞膜・ホルモン・胆汁酸を作る材料となる。また生体膜の常在成分であり、生体膜の流動性や硬さを調節するなど重要な役割を果たしている1)。コレステロールの構造式を図1に示す。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第三理化学検査室
コレステロールは人間など高等動物の細胞に存在する脂質であり、細胞膜・ホルモン・胆汁酸を作る材料となる。また生体膜の常在成分であり、生体膜の流動性や硬さを調節するなど重要な役割を果たしている1)。コレステロールの構造式を図1に示す。
図1. コレステロールの構造式2)
食品表示基準に示されたコレステロールの分析フローチャートを図2に示す。食品中のコレステロールは遊離型のみでなく、脂肪酸と結合したエステル型でも存在する。遊離型とエステル型を合わせたコレステロール総量を定量するために、けん化(アルカリによるエステル加水分解反応)によりエステル型を遊離型へ分解する必要がある。遊離型のコレステロールを液液分配により石油エーテルへと転溶させたのち、アルカリを水で洗浄し、濃縮・定容を経てガスクロマトグラフにて測定する。
図2. コレステロールの分析フローチャート3)
コレステロールは内部標準物質5-α-コレスタンを用いた内部標準法により定量する。図3にコレステロールならびに5-α-コレスタンのクロマトグラムを示す。内部標準法は、内部標準物質と対象成分のクロマトグラムのピーク面積比または高さ比から対象成分の含量を定量する方法である。そのため、対象成分および内部標準物質の保持時間近辺に定量に影響するピークがないことが重要なポイントとなる。定量に影響するピークが認められる際には、前処理において精製などの追加操作を実施、もしくは測定条件を変更するなど対策を講じる必要がある。
図3. コレステロールならびに5-α-コレスタンのクロマトグラム
前述のようにコレステロールは人が生存するために重要な役割を担っているが、血液中のHDLコレステロールとLDLコレステロールのバランスが崩れると、生活習慣病の因子となりうるため、コレステロールの摂取は身体によくないイメージが先行している。日常の食生活で重要なことは、コレステロール自体の摂取を控えることではなく、HDLコレステロールとLDLコレステロールをバランスよく保つことである。一般的にLDLコレステロールが高くなることによりバランスが崩れることが多い。LDLコレステロールが高くなる要因である動物性脂質はとりすぎる傾向があるため控え、動物性脂質のなかでもHDLコレステロールを増やす効果のある青魚やLDLコレステロールを抑える植物性脂質を積極的に摂取することが望ましい4),5)。適切なバランスで摂取することが難しい場合には、特定保健用食品や機能性表示食品も、利用上の注意点や適量を意識しながら、取り入れていくのもひとつの手である6)。