食品分析の試料保管における注意点

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

検体調製室

<はじめに>

食品分析では、すぐさま検査すべきではあるが、検査が完了するまでに数日を要することが多く、その間、検査結果に影響を与えないよう試料を適切に保管する必要がある。また、検査対象となる食品は多岐にわたるため、それぞれの特性に応じた保管方法を選択しなければならない。さらに、保管中に試料を確実に識別できるようにすることや、外部からのコンタミネーション(汚染)を防止することも重要である。

本稿では、食品分析の試料保管における注意点について紹介する。

<食品中の成分に応じた保管>

検査成分の中には、検査が完了するまでの保管中に増加や減少が生じやすいものがある。代表的な例としてビタミン類が挙げられ、これらは酸化や酵素反応によって分解されやすい。そのため、試料は検査が完了するまで冷蔵又は冷凍保管し、酸素や酵素の作用を抑制することで成分の変化を防ぐ必要がある。また、ビタミン類の中には光によって分解されるものもあるため、遮光容器を用いるなど、光を遮断するための工夫も求められる。

また、水分を検査対象とする場合には、保管中の蒸散や吸湿に十分に注意する必要がある。密封性の高い容器を用い、必要に応じて乾燥剤を同封することで、水分量の変化を防ぐ。

さらに、アルコールなどの揮発性成分を対象とする検査においては、密封性の高い容器を用いる、または冷凍保管を行い、成分の揮発を防ぐ必要がある。

<食品の物性に合わせた保管>

食品の中には、保管方法によって物性が変化し、検査に影響を及ぼすものがある。そのため、食品の特性を十分に理解した上で、適切な保管方法を選択することが必要である。保管中の物性変化を防止するため、食品ごとに最適な保管方法を選択する。

表1に代表的な食品の保管方法と注意事項を示す。

表1:代表的な食品の保管方法と注意事項

食品名 保管方法 注意事項
こんにゃく 冷蔵 冷凍により水分が分離し、組織がスポンジ状に変化する
豆腐 冷蔵 冷凍により内部の水分が分離する
チーズ、マヨネーズ 冷蔵 冷凍により乳化状態が破壊され、離水が生じる可能性がある
はちみつ 常温 冷蔵、冷凍では糖分が結晶化する
生卵 冷蔵 冷凍すると殻に亀裂が入り、物性が変化する

<安全に保管>

検査が完了するまでの間、試料の損失やコンタミネーション(汚染)が発生しないよう、適切な取り扱いと保管方法を選択することが重要である。特に、温度変化による容器破損や、密閉不良による飛散・漏えいは、試料の損失やコンタミネーション(汚染)につながるため十分な注意が必要である。

例えば、液体試料を冷凍すると体積が増加するため、保管容器内に空間がない場合は、膨張により容器が破損し、試料が漏えいする恐れがある。このため、保管容器に適度な空間を確保し、開口部を上向きにした状態で保管することが望ましい(図1)。

図1:液体試料の冷凍保管

 

また、炭酸飲料を冷凍すると、内部圧力の上昇により容器破損が発生しやすい。破損した容器から試料が漏れ出した場合、試料として使用不可能となるだけでなく、周囲の試料への影響が懸念される。冷凍保管する必要がある場合は、事前に脱気処理を行い、炭酸ガス量を低減することで、容器破損のリスクを抑えることができる。

<識別できるように保管>

試料は、他の試料と確実に区別して取り扱えるよう、適切な識別管理を行うことが重要である。保管容器には通し番号や記号などを明記し、試料の取り違えを防止するとともに、必要な試料を速やかに取り出せる状態を維持する。

また、検査時には均質な状態で採取を行う必要があるため、作業性の良い形状の容器を選定することが望ましい。

<さいごに>

食品分析における試料保管は、検査の品質を確保するための基本事項であり、食品中の成分に応じた温度管理、食品物性に合わせた適切な保存方法、安全性を確保するための容器選定及び取り扱い、さらに試料の取り違えを防止するための識別管理など、複数の視点から試料保管の方法を総合的に判断する必要がある。食品分析の精度を確保するためには、試料保管に十分に配慮することが重要である。

参考文献

菅原龍幸・前川昭男監修『新食品分析ハンドブック』建帛社、平成12年11月20日発行、p1-14