食品のにおいは、①感覚要因(どのように感じるか)、②発生要因(なぜ発生したか)、③化学要因(どのような化学構造か)の三つの視点を組み合わせることで、より深く理解することができる。
においの評価は他の感覚と比べて難しいからこそ、においを言語化し、広く共有することが非常に重要であると考えられる。食品のにおいは単に「良い」「悪い」と評価するのではなく、感覚要因、発生要因、化学要因それぞれの視点から整理し、理解を深めることが求められる。
① 感覚要因とは、においの特徴を言語化し、感覚ごとに用語を整理する視点である。
たとえば、野菜やハーブ類、未熟な果実では「青臭い」「グリーン香」と表現されることが多い。また、メイラード反応による加熱生成物や焙煎した種子類では、「ロースト感」や「香ばしい」と表現されることが一般的である。感覚的視点は、商品開発や製造処方の変更などによって生じたにおいの変化を迅速に把握し、共有する際に有効である。
② 発生要因とは、なぜそのにおいが生じ、どのように変化していくかを理解する視点である。
原料由来の場合には、品種、産地、季節の違いが影響することが考えられる。また、工程由来では、メイラード反応、酸化、発酵、酵素反応の進行度などが関与する。刻々と変化するにおいの把握にも役立ち、条件の違いがにおいに与える影響を検討する手助けとなる。
③ 化学要因は、におい物質の化学構造に由来する特徴を理解する上で重要である。
においは物質が嗅覚受容体に結合することで知覚されるため、化学構造に基づいて特徴や類似性を大別することが可能である。たとえば、かんきつ類に多く含まれるテルペン類は、さわやかで、かんきつ様の香りを呈するものが多い。また、穀類やナッツ類を加熱した際に生じる香ばしい焙煎香は、主にピラジン類によるものである。化学的視点は、どのようなにおいが発生しやすいか、条件による生成の程度を予測する際にも有用であり、機器分析による成分推定と官能評価を結び付けるためにも重要な考え方である。これら三つの視点を組み合わせることで、食品のにおいは「あいまいな印象」から「解像度の高い理解」へと深まっていく。