食品表示基準において糖類とは「単糖類又は二糖類であって、糖アルコールではないもの」と定義されており、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖の6糖を基本的な測定対象としている1)。単糖類にはブドウ糖、果糖、ガラクトースがあり、二糖類にはブドウ糖と果糖が結合したショ糖、ブドウ糖とガラクトースが結合した乳糖、ブドウ糖が2つ結合した麦芽糖がある(図1)。
一般財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
第三理化学検査室
食品表示基準において糖類とは「単糖類又は二糖類であって、糖アルコールではないもの」と定義されており、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖の6糖を基本的な測定対象としている1)。単糖類にはブドウ糖、果糖、ガラクトースがあり、二糖類にはブドウ糖と果糖が結合したショ糖、ブドウ糖とガラクトースが結合した乳糖、ブドウ糖が2つ結合した麦芽糖がある(図1)。

図1. 糖類の構造式
糖類の分析には、高速液体クロマトグラフ(HPLC)が広く用いられている。HPLCの検出器として汎用的に使用される紫外吸光度検出器(UV検出器)は、多くの化合物に適用できるが、糖類は一般に紫外吸収をほとんど示さないため、紫外吸光度検出器による検出は困難である。そのため、糖類の分析では、示差屈折率検出器(RI検出器)が広く用いられる。このほか、誘導体化を前提として蛍光検出器、パルス電気化学検出器(PAD)、蒸発光散乱検出器(ELSD)などが用いられる。
本稿では、食品表示基準における糖類の分析方法を例として、示差屈折率検出器および蛍光検出器の検出原理を概説する。
食品表示基準における糖類の高速液体クロマトグラフ法による分析フローチャートを図2に示す。糖類はHPLCを用いて複数の成分を同時に分析できる。均質化した検体を秤量し、水で抽出後、HPLCにて測定を行う1)。

図2. 糖類の分析フローチャート
※食品成分の特性によって抽出溶媒や操作条件が異なるため、基本操作のみを示す
なお、糖類の定義には含まれないが、糖アルコールについても同様のフローで分析できる。糖アルコールとは、糖のカルボニル基を還元して作られる糖質の総称であり、ソルビトールやエリスリトール、マルチトール、キシリトールなどが挙げられる。
示差屈折率検出器は、移動相と試料の屈折率の差を検出してピークとして記録する検出器である。すべての糖類の検出が可能で汎用性が高く、一般的に用いられる検出器である。一方で、屈折率差を示す化合物すべてに応答するため、選択性は乏しい。また、他の検出器と比較して感度が低く、温度や移動相組成の変動に影響を受けるためグラジエント溶出法による測定には適していない。よって、アイソクラティック溶出法による測定が基本となる。
アミノカラムを用いて、示差屈折率検出器で分析した糖類(果糖、ブドウ糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖及び乳糖)のクロマトグラムを図3に示す。

図3. 糖類のクロマトグラム(示差屈折率検出器)
移動相組成やカラムの変更によって、各成分の分離状況が変わるため、各成分の感度や保持時間を確認しながら、最適な組み合わせで測定することが望ましい。糖以外の夾雑成分も検出されるため、糖と夾雑成分のピークが重なることもある。移動相組成やカラムを変更しても各成分を十分に分離できない場合、選択性の高い蛍光検出器や電気化学検出器を使用することが有効である。
蛍光検出器は蛍光を有する物質を検出できる。安定した状態である基底状態の物質に特定の波長(励起波長)を照射すると、光を吸収した物質はエネルギーが高い状態の励起状態となるが、物質はすぐにエネルギーを光として放出して基底状態に戻る。この時に放出される光が蛍光である。この蛍光の波長は物質に固有であり、紫外吸光度検出器や示差屈折率検出器と比較して、選択性が高く、高感度に測定が可能である。
糖類は蛍光を示さないため、蛍光検出器を用いて測定する場合は誘導体化が必要となる。一般的に、カラムで各成分を分離した後に、反応試薬で誘導体化を行うポストカラム誘導体化法が用いられる。また、蛍光検出器を用いる測定ではグラジエント溶出法を用いた測定が可能である。蛍光検出器による糖類の分析例を2つ紹介する。
① フェニルヒドラジン法
まず1つ目の例として、カラム溶出液にリン酸-フェニルヒドラジン試薬を反応させて蛍光検出した糖類のクロマトグラムを図4に示す。フェニルヒドラジンのアミノ基と糖のカルボニル基がシッフ塩基(R1R2C=N-R3)を形成し、蛍光標識されることで検出が可能となっている。従来、還元糖と非還元糖の同時分析は難しいとされてきたが、フェニルヒドラジン試薬を用いることで、両者を同時に分析できる2)。

図4. 糖類のクロマトグラム(フェニルヒドラジン法)
② アルギニン-ほう酸法
2つ目の例として、カラム溶出液にアルギニン-ほう酸試薬を反応させることで、糖の蛍光誘導体を生成させる方法もある3)。この反応は温度依存性があり、ほう酸存在下でアルギニンと反応させる際、100℃では蛍光強度が低く、150℃に上げるにつれて蛍光強度が増加することが確認されている4)。
アルギニン-ほう酸試薬で反応させて蛍光検出した糖類のクロマトグラムを図5に示す。本法では、非還元性二糖であるショ糖も検出可能であるが、還元性二糖の麦芽糖と比較すると感度は低く、同一条件での比較では約1/10となる5) が、基本的な測定対象である6糖を同時に検出できることはメリットである。

図5. 糖類のクロマトグラム(アルギニン-ほう酸法)
糖類の分析における前処理は比較的簡便である一方、複数成分の分離はHPLC条件に依存する。測定において検出器、カラム、移動相組成や送液方法(アイソクラティック又はグラジエント溶出法)によって、各成分の保持時間、分離度、感度が異なり、これらの組み合わせは多岐に渡る。示差屈折率検出器のみの測定の場合、試料によっては夾雑成分の影響を受けて定量が困難となる可能性があるが、別の検出器での測定によって解消することもある。糖類のような多成分分析においては、複数の測定条件を組み合わせることが重要である。測定条件ごとに各成分の分離や感度を把握し、複数の測定条件での分析値を比較することで、より精度の高い定量値を算出することができる。正確に各成分の同定や定量をするためには、複数条件による測定を実施できることが望ましいと考える。