クロルピリホスの試験法について

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

第二理化学検査室

1. はじめに

近年、世界的にクロルピリホスを禁止する動きが広がっている。欧米やタイなどは使用を禁止しており、また、それに伴う需要の減少を理由にクロルピリホスのメーカー最大手も製造中止を発表している。一方、日本ではクロルピリホスの使用が認められている。令和3年5月13日生食発0513第1号により、農薬数項目の規格基準の一部が改正された。クロルピリホスも改正された一つである。今回の豆知識では、このクロルピリホスについて紹介したい。

2.クロルピリホスとは

クロルピリホス(chlorpyrifos)は分子式C9H11Cl3NO3PSで表す白色の結晶である。 1962年にアメリカのダウ・ケミカル社が開発した果樹害虫防除用の有機リン系殺虫剤であり、ハマキムシ類、シンクイ虫類などに効果があり、昆虫の中枢神経系のアセチルコリンエステラーゼ活性を阻害することにより殺虫効果を発揮する。

図1. クロルピリホスの構造式

日本ではシロアリ駆除剤としても使用されていたが、シックハウス症候群が問題視され、2003年に建築基準法の改正により居室の有る建物へのクロルピリホスの使用が禁止されている。しかし、農薬としては現在も使用が認められている。

3.クロルピリホス試験法1)

クロルピリホスの一般的な検査方法を図2に示す。

アセトンで抽出後、飽和食塩水と酢酸エチル:ヘキサン(1:4)で液液転溶を行う。濃縮後、油脂含量の多い穀類、豆類及び種実類については脱脂操作を行い、その後、シリカ、フロリジル、アルミナカラムなどで精製を行い、ガスクロマトグラフにて測定を行う。

抹茶以外の茶の場合、茶葉をお湯に浸し作成した浸出液を使用する。転溶時のエマルジョンの生成を抑制するため、飽和酢酸鉛を加え、沈殿を取り除き、その後の操作は果実、野菜、ハーブ、抹茶及びホップと同様である。

図2. クロルピリホスの検査方法

4.基準値について

令和3年5月13日生食発0513第1号の改正でクロルピリホスの多くの食品についてクロルピリホスの基準値が一年間の猶予期間をもって引き下げられた。しかし、柑橘系作物や茶など改正前と同じく高い基準値のものや、たまねぎ、ピーマン、ブロッコリー、魚介類など基準値が引き上げられた食品も存在している。(表1)

農薬は使用する作物によって使用期間・使用量・使用回数が決められている。その決められた使用方法で使用された時の残留濃度に基づき、さらに、人の健康を損なうおそれのない量を確認した上で、農薬の残留基準値は設定されている。2)

表1. クロルピリホスの改正前と後の基準値一覧の一部

食品名 基準値
改正前
(ppm)
基準値
改正後
(ppm)
食品名 基準値
改正前
(ppm)
基準値
改正前
(ppm)
米(玄米をいう。) 0.1 一律基準 ピーマン 0.5 2
小麦 0.5 0.5 なす 0.2  一律基準
はくさい 1.0 一律基準 レモン 1
こまつな 1 一律基準 りんご 1.0  0.5
ブロッコリー 1 2 いちご 0.2 0.3
たまねぎ 0.05 0.2 バナナ  3 2
にんじん 0.5 0.1 10  10
トマト 0.5 一律基準 魚介類  一律基準 0.3

5.おわりに

世界では規制されつつあるクロルピリホスであるが、日本では使用が認められている。クロルピリホスを使用して収穫した農作物を輸出する際には、輸出国における基準値を確認する等の注意が必要である。

   

参考文献

1)
平成17年1月24日付け食安発第0124001号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)別添「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu3/2-004.html
2)
厚生労働省ホームページ 残留農薬
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/faq.html#h3_q1