HACCPは基本的に健康被害を引き起こす可能性がある事象を危害要因として抽出し、それらが食品で問題にならないように管理するシステムです。そのなかで異物は、物理的な危害要因であり、一般的にガラスや鋭利な金属などが対象となります。HACCPにおいては、これらの異物を排除する最後の砦となる工程を重要管理点(CCP)として管理することで、食品の安全性を確保します。異物混入を削減するためには、食品等事業者が実施している危害要因の抽出やCCPの管理状況に問題がないかを確認することが必要です。
一方、国内の法令において、異物の明確な定義はありません。食品衛生検査指針では、「生産、貯蔵、流通、販売に至る不適切な取り扱いに伴って、食品中に混入、侵入あるいは迷入した有形外来物を対象とする」と記載があります。これらの異物は、動物性、植物性、鉱物性といった種類に分類することができ、さらに由来別に細分できます(表1参照)。
表1 異物の種類
表2に令和2年度に東京都内で報告された異物の要因別苦情処理件数を示します。苦情処理された異物の種類は幅広く、虫、毛髪、ビニール類、金属などが多く届出されています。これらの内、小さな樹脂片、毛髪、虫、紙片、繊維などは、HACCPの対象にならず、健康被害につながることは少なく、HACCPの対象にならないのですが、消費者から問題視されることが多いのが現状です。
以上より、HACCPにおける異物と、実際に消費者が認識する異物に相違があることがわかります。食品等事業者が消費者の満足する食品を提供するためには、HACCPにおける健康被害を引き起こす可能性がある異物だけでなく、健康被害につながらないような異物についても対策することが必要です。
表2 要因別苦情処理件数(異物混入)
東京都福祉保健局HP:「令和2年度 苦情処理状況 要因別苦情件数 異物混入要因」より