食品、及び食品に使用される食品添加物や容器包装等に関する規格は、食品衛生法に基づき定められている。いわゆる「規格試験」とは、これらの規格に適合しているかどうかを判定する試験であり、食品衛生法第十三条第二項により規格試験に適合しないものは国内での使用・販売等が許可されない。今回は、食品添加物の規格試験について説明する。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第一理化学検査室
食品、及び食品に使用される食品添加物や容器包装等に関する規格は、食品衛生法に基づき定められている。いわゆる「規格試験」とは、これらの規格に適合しているかどうかを判定する試験であり、食品衛生法第十三条第二項により規格試験に適合しないものは国内での使用・販売等が許可されない。今回は、食品添加物の規格試験について説明する。
食品添加物公定書は食品衛生法第二十一条に基づき、同第十三条第一項及び食品表示法第四条第一項により定められた食品添加物の保存、製造、使用についての基準や成分についての規格を収載している。なお本書は、食品添加物の成分規格の追加および削除のほか、食品添加物の製造・品質管理の技術、及び検査方法の進歩を考慮し、定期的な改正が行われている。
食品添加物公定書は、通則、一般試験法、試薬・試液等、成分規格・保存基準各条、製造基準、使用基準及び表示基準で構成されており、本稿で取り上げる食品添加物の規格試験は、各食品添加物の成分規格に基づいて実施される。通則では、規格試験に関する適否判定の基準や、単位の規定、用語の定義等がまとめられている。続いて、一般試験法には、複数の食品添加物の規格試験において共通に用いられる試験法がまとめられており、例えば乾燥減量試験法や重金属試験法がある。試薬・試液等では、規格試験に使用する試薬のグレードや試液の調製方法等が記載されている。また、保存基準は当該の添加物の保存容器や保存条件に関する規定であり、成分規格に付随する形式で収載されている。
成分規格は、当該の食品添加物の有効性や安全性について一定の品質を担保するものである。下記の通り、定義、性状、添加物の含量や不純物の限度量、及びその試験方法等が定められている。
[成分規格において規定されている主な項目]
通例、味・におい・色・形状等に関するものが多く、目視や官能試験により判定を行う。一部の食品添加物では溶解性の規定もある。なお、固体の形状は参考に供するもので判定基準を示すものではない。前述の通り、このような適否の判定基準に関する事項は通則に記載されている。
・確認試験
食品添加物中に含有する主成分等をその特性に基づいて確認するための試験である。一般試験法の定性反応試験法を用いるものも多く、例えば「L-アスコルビン酸ナトリウム」の確認試験は、ナトリウム塩の定性反応試験を含む。
・純度試験
食品添加物中に混在する不純物に関する試験である。添加物中の不純物はできる限り少なくする必要があるが、当該の物質100%の純品を精製することは難しいため、安全性や品質面を考慮し、混在が予想される物質の種類及びその量の限度を規定している。例えば、塩化物やヒ素等の規定がある。
・乾燥減量/強熱減量
乾燥減量は、試料を規定された条件で乾燥するときに失われる水分及び揮発性物質の量を、強熱減量は、試料を規定された条件で強熱するときに失われる水分及びその他の混在物の量を測定する試験である。
・強熱残分
試料に硫酸を加えて強熱するときに残留する物質の量を測定する試験である。通例、添加物中に不純物として含まれる無機物の含量を硫酸塩として測定する。
・定量法
当該の物質の含量を、物理的、化学的又は生物学的方法により測定する試験である。通例、成分規格内の含量が適否の判定基準となる。
各食品添加物の成分規格は、上記の項目全てではなく、それぞれで必要とされる項目が定められており、規定された全ての規格について適合と判断されて初めて食品添加物としての使用が認められる。
食品添加物に対してネガティブな印象を持っている人は多いと思われる。一方で、昨今の豊かな食生活において、食品添加物は欠かせない存在となっている。国内では、食品添加物の安全性を確保するために、食品安全委員会が一日摂取許容量(ADI)の設定等の安全性評価を行っている。また、厚生労働省はその評価結果に基づき、消費者の日常生活における食品添加物摂取量がADIを十分下回るように使用基準等を定めており、食品添加物の安全性の管理が行われている。
第9版食品添加物公定書解説書 廣川書店(2019)
厚生労働省HP 食品添加物(2022年10月27日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html