食品添加物の中で、広く一般的に知られている物質に酸化防止剤がある。酸化防止剤には、油脂の酸敗等を防止する目的で食品に添加する物質がある。油脂および油脂性食品は貯蔵中または使用中に光、熱、空気中の酸素などに暴露されると劣化し、各種酸化生成物を生じていわゆる「油やけ」を起こす。酸化防止剤の使用は、それ自身の熱や紫外線に対する安定性などにより添加する食品が決められる1)。
本稿では、酸化防止剤の一種であるBHAおよびBHTとその試験法について紹介する。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第二理化学検査室
食品添加物の中で、広く一般的に知られている物質に酸化防止剤がある。酸化防止剤には、油脂の酸敗等を防止する目的で食品に添加する物質がある。油脂および油脂性食品は貯蔵中または使用中に光、熱、空気中の酸素などに暴露されると劣化し、各種酸化生成物を生じていわゆる「油やけ」を起こす。酸化防止剤の使用は、それ自身の熱や紫外線に対する安定性などにより添加する食品が決められる1)。
本稿では、酸化防止剤の一種であるBHAおよびBHTとその試験法について紹介する。
BHAおよびBHTはフェノール系酸化防止剤である。熱に安定であり、鉄イオンによる着色がないこと、加熱加工後の効力維持に優れていることから、BHAは主に油脂、バターに使用され、それらを原材料とするパン、即席めん類、揚菓子パンなどに含まれる。BHTは主に加熱加工食品、水産食品に使用される1)。また、BHAおよびBHTは単独でも使用されるが、クエン酸やアスコルビン酸などに相乗剤としての効果があり、他の酸化防止剤と併用されることもある1)。
物質名 | 使用できる食品 | 使用量等の 最大限度 |
---|---|---|
BHA | 魚介冷凍品(生食用冷凍鮮魚介類および生食用冷凍かきを除く)、 および鯨冷凍品(生食用冷凍鯨肉を除く)の浸漬液 |
浸漬液に対して1 g/kg* |
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも | 0.2 g/kg* | |
BHT | 魚介冷凍品(生食用冷凍鮮魚介類および生食用冷凍かきを除く)、 および鯨冷凍品(生食用冷凍鯨肉を除く)の浸漬液 |
浸漬液に対して1 g/kg* |
チューインガム | 0.75 g/kg | |
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも | 0.2 g/kg* |
* BHAおよびBHTを併用するときはその合計量
BHAおよびBHTの試験法のフローを図3に示す。
植物油は秤量後、アセトニトリル・2-プロパノール・エタノール混液(2:1:1)にて抽出する。バターは40℃で加温融解し、魚介類製品および魚介冷凍品は粉砕し、それぞれ秤量後、無水硫酸ナトリウムおよびアセトニトリル・2-プロパノール・エタノール混液(2:1:1)を加える。振とう後、油脂分と分離するため1時間以上-20℃~-5℃で冷却し、フィルターろ過したもの試料液とする。測定には紫外部吸収検出器付HPLCを用い、波長280 nmで測定する。移動相にはアセトニトリル・メタノール混液(1:1)および5%酢酸溶液を用いる。
市販の充填カラムとして、Inertsil ODS-2(ジーエルサイエンス)、TSKgel ODS-120T(東ソー)、Wakosil Ⅱ-5C18HG(富士フィルム和光純薬)、Mightysil RP-18 GP(関東化学)(いずれも4.0-6.0mm i.d.×150-250mm)などが使用できる1)。ODS系のカラム充填剤は、メタノールにより膨潤し、アセトニトリルにより収縮する。したがってメタノールおよびアセトニトリルを混合することにより、それらの性質が打ち消され、酸化防止剤の相互分離が良くなる1)。
食品の酸化が進行すると、異臭や異味だけでなく過酸化物の毒性よって消化器障害を起こすこともある1)。酸化防止剤は、使用できる食品と使用量等の最大限度を正しく守って使用することが重要である。