二酸化硫黄は指定添加物であり、別名:無水亜硫酸とも呼ばれ、食品に対し、漂白剤や保存料、酸化防止剤の目的で広く使用されている。指定添加物とは、食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物のことであり、化学的合成品だけでなく、天然物も指定の対象となっている。二酸化硫黄の使用基準は、かんぴょう、コンニャク粉、果実酒、えび等の食品に対して0.030~5.0 g/kgが設定されており、ごま、豆類及び野菜に対しては使用が禁止されている。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第一理化学検査室
二酸化硫黄は指定添加物であり、別名:無水亜硫酸とも呼ばれ、食品に対し、漂白剤や保存料、酸化防止剤の目的で広く使用されている。指定添加物とは、食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物のことであり、化学的合成品だけでなく、天然物も指定の対象となっている。二酸化硫黄の使用基準は、かんぴょう、コンニャク粉、果実酒、えび等の食品に対して0.030~5.0 g/kgが設定されており、ごま、豆類及び野菜に対しては使用が禁止されている。
厚生労働省より食品中の二酸化硫黄の分析法が示されており、通気蒸留装置を用いるアルカリ滴定法及び比色法により、二酸化硫黄及び亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩類を二酸化硫黄として定量する。また、確認分析法としてHPLC法が示されているが、本稿ではアルカリ滴定法及び比色法について解説する。
アルカリ滴定法は二酸化硫黄として約0.1 g/kg以上含まれる食品を対象とし、酢酸等の有機酸を多く含む食品には適用できない。一方、比色法は二酸化硫黄として約0.1 g/kg 以下の食品を対象とし、有機酸を多く含む食品にも適用可能である。通気蒸留装置を図1、各分析法のフローを図2に示す。
1)アルカリ滴定法
試料を酸性条件で蒸留して亜硫酸を過酸化水素溶液で捕集し、水酸化ナトリウム溶液で滴定する方法である。通気蒸留装置の(A)に過酸化水素溶液及びメチルレッド・メチレンブルー溶液を加え、(B)に試料、エタノール、蒸留水、シリコーン樹脂及びリン酸溶液を加え、窒素ガスを通気しながらミクロバーナーで加熱する。(A)の捕集液を試験溶液とし、水酸化ナトリウム溶液で溶液の色が青みの緑色となるまで滴定し二酸化硫黄として定量する。
2) 比色法
試料を酸性条件で蒸留して亜硫酸を水酸化ナトリウム溶液で捕集し、捕集液中の亜硫酸と試薬を反応させて呈色させる方法である。通気蒸留装置の(A)に水酸化ナトリウム溶液を加え、(B)に蒸留水、ジメドン・エタノール溶液、アジ化ナトリウム溶液、エタノール、シリコーン樹脂及びリン酸溶液を加え、蒸留装置に窒素ガスを5分間通気する。その後、(B)に試料を加えて窒素ガスを通気しながらミクロバーナーで加熱する。(A)の捕集液を水酸化ナトリウム溶液で定容したものを試験溶液とする。標準溶液及び試験溶液にパラローズアニリン・ホルムアルデヒド溶液を加えて呈色させ、分光光度計を用いて吸光度を測定し、二酸化硫黄として定量する。
3)分析法の留意事項
アルカリ滴定法及び比色法では、空試験として試薬のみで試験操作を行い、蒸留装置内の汚染の有無を確認する必要がある。また、水に含まれる溶存酸素は二酸化硫黄を酸化して分析の妨害となるため、分析に用いる水は脱気したものを用いる。蒸留装置の(B)に加えるエタノールは蒸留時に試料が膨潤し流動性が失われることを防ぎ、シリコーン樹脂は気泡の発生を防ぐ目的で添加する。いずれの試薬も定量の妨害となる不純物が含まれないものを使用する。
比色法は微量の亜硫酸を定量するため、分析の妨害となる成分(酸素、低級アルデヒド、亜硝酸)の影響に留意しなければならない。試料採取前に試薬類を加えた状態で蒸留装置に窒素ガスを通気する操作は、試薬及び装置中の酸素を除去することが目的である。ジメドンは試料中に含まれる低級アルデヒドがパラローズアニリン・ホルムアルデヒド溶液による呈色を妨害することを防ぐ目的で加える。アジ化ナトリウム溶液は試料中の亜硝酸による定量の妨害を防ぐ目的で加える。ただし、玉ねぎ等の硫黄化合物を多く含む食品ではアジ化ナトリウム溶液により二酸化硫黄が生成するため加える必要はない。
本稿では二酸化硫黄の分析法を2つ紹介した。基本的には食品中の二酸化硫黄の含有量により分析法を選択する必要があるが、有機酸を考慮する必要がある。また、加える試薬に関しても二酸化硫黄以外の成分を考慮する必要がある。そのため、適切な分析法や試験操作を選択することが大切である。