ビタミンCについて

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

第三理化学検査室

【ビタミンCとは】

食品表示基準では、ビタミンCは、L-アスコルビン酸(還元型ビタミンC)及びL-デヒドロアスコルビン酸(酸化型ビタミンC)を測定の対象とし、その測定値の合計とされている1)。これは、デヒドロアスコルビン酸が生体内で還元され、アスコルビン酸となるためである2)。ビタミンCは、ビタミン類のうち水に溶ける水溶性ビタミンに分類される。L-アスコルビン酸及びL-デヒドロアスコルビン酸の構造式を図1に示す。

図1. L-アスコルビン酸及びL-デヒドロアスコルビン酸の構造式

ビタミンCは、多くの野菜・果実類に含まれることから、比較的摂取が容易なビタミンである。ビタミンCを多く含む主な食品として、野菜類ではピーマン、ブロッコリー、とうがらしなどが挙げられる。また果実類では、アセロラ、グァバ、すだち、レモンなどが挙げられる3)

ビタミン類は、食品を調理すると減少することが知られている。多くのビタミンは、洗う・切る・すりおろす・冷解凍などの非加熱調理において、0~30%程減少し、煮る・炒める・揚げるなどの加熱調理において10~30%程減少すると報告されている。ビタミンCは、非加熱調理により30%程、加熱調理により50%程減少するため、ビタミン類の中でも調理によって最も減少するビタミンといえる4)

【ビタミンCの効果・有効性】

ビタミンCは、皮膚や腱、軟骨などを構成するたんぱく質であるコラーゲンをつくるために必須であり、欠乏するとコラーゲンの合成ができず血管が脆くなり、出血しやすくなる。体内では抗酸化物質として働いているほか、消化管では鉄の吸収を高める効果がある。また、メラニン色素の生成を抑制する、免疫力を高めるといった有効性も示されている4)

ビタミンCが不足すると、倦怠感、疲労感、気力低下などの症状が出る。欠乏に至ると壊血病となり歯肉出血や皮下出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難など、さまざまな症状が発症する。ビタミンCは、普通の食事では、過剰摂取による健康障害は報告されていない。万が一、過剰に摂取しても、消化管からの吸収率や腎臓からの排泄などにより体内のビタミンCレベルが一定に維持されるため、安全と考えられている。しかし、サプリメントなどによる過剰摂取により、吐き気や下痢、腹痛などが生じることがあるとされているほか、腎機能が低下している場合、尿路結石ができやすいため注意が必要とされている4)

【ビタミンCの分析方法】

食品中のビタミンCの分析方法は、食品表示基準に示される方法が一般的である1)。食品表示基準には、ビタミンCの分析方法として、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン法や、インドフェノール・キシレン法など、複数の分析法が示されているが、感度や選択性などの利点から、高速液体クロマトグラフ法が広く用いられる。高速液体クロマトグラフ法では、ビタミンCが酸性下で比較的安定であるため、酸性溶媒のメタリン酸溶液で抽出する。抽出液にインドフェノールを加えて還元型ビタミンCであるL-アスコルビン酸を酸化型であるL-デヒドロアスコルビン酸に酸化、収斂し、過剰に酸化が進むとビタミンC効力をもたないジケトグロンサンになるため、チオ尿素で酸化を停止する。その後、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応させ、生成したオサゾン(ビタミンC誘導体)を紫外可視検出器付き高速液体クロマトグラフにより測定する。ビタミンCの分析法フローチャートとクロマトグラムを、図2及び図3に示す。

図2. ビタミンCの分析法フローチャート

図3. ビタミンCのクロマトグラム

【おわりに】

ビタミンCは、体内で合成することが出来ないため、食品から摂取することが必須の重要な栄養素の一つである。また、水溶性であるアスコルビン酸を油脂などに混合する目的で、油脂と混ざりやすくしたアスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステルといったエステル類や、熱・光に対し安定性を高めたアスコルビン酸-2-グルコシドといった配糖体など、食品添加物として様々な形態で用いられることも多い。

幅広い食品に含まれるビタミンCは、バランスの良い食事を心がけていれば不足することは殆ど無いが、ビタミンの中でも特に調理や保存によって分解しやすいため、生鮮野菜や果物も意識して摂取することが望ましいと考える。

参考文献

1)
消費者庁:食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号) 別添 栄養成分等の分析方法等
2)
食品機能性の科学,食品機能性の科学編集委員会 編,株式会社産業技術サービスセンター(2008)
3)
文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
4)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:特定保健用食品/その他解説 ビタミンについての解説
https://hfnet.nibiohn.go.jp/