厚生労働省の食品衛生申請等システムにおいて公表されているリコール情報をもとに内容を整理しました。
令和4年度中に食品衛生法違反(違反のおそれを含む)によるもの202件(29.2%)、食品表示法違反(違反のおそれを含む) によるもの490件(70.8%)のリコール報告がありました(図2)。
図⒉ 法律別報告件数(令和4年度)
⑴ CLASS分類別報告件数
食品衛生法関連では、CLASSⅡやCLASSⅢに分類される事案が全体の76.2%と大半を占めていましたが、CLASSⅠに分類される危害度の高い事案も全体の23.8%報告されていました(図3)。
一方、食品表示法関連では、CLASSⅠ、Ⅱともほぼ同率でしたが、CLASSⅠに分類されるアレルゲン等の表示の不表示、誤表示等、表示違反事案が53.3%も占めていることは、問題視しなければなりません(図4)。
図⒊ CLASS別報告件数(食品衛生法関連)(令和4年度)
図⒋ CLASS別報告件数(食品表示法関連)(令和4年度)
⑵ 回収理由別、CLASS分類別報告件数
図⒌ 回収理由別報告件数(食品衛生法関連)(令和4年度)
CLASSⅠに分類される事案では異物混入が全体の60.4%を占め、原因となった硬質異物の種類としては、金属片が48.3%と非常に多く、次いでガラス片、プラスチック片の順でした(図6、図7)。金属異物には、原材料に由来するジビエ肉を使用した食肉製品に散弾銃弾が混入していた事案、製造工程に由来する事案としては生産ラインの機械部品から剝離したアルミニウム、調理器具(食肉の筋切用器具)の刃こぼれ、ステンレス製の金タワシの欠損等の混入報告がありました。大半の食品事業者ではこれらの金属異物の混入対策にHACCPシステムによる管理の中で金属検査機によるモニタリングを実施しています。しかし、HACCPシステムが適正に機能していない、または機器器具や調理器具の日常点検が適確に実施されていなかったことが示唆されました。
有害微生物の残存の事案には、腸管出血性大腸菌O26が検出された馬刺し(馬脂肪注入冷凍馬肉)生食用が全国に流通し、健康被害が1名発生した事例が報告されていました。
図⒍ 回収理由別報告件数(食品衛生法関連 CLASSⅠ)(令和4年度)
図⒎ 混入異物の種類(食品衛生法関連 CLASSⅠ)(令和4年度)
CLASSⅡに分類される事案では、有害微生物の残存、誤って期限切れの製品を販売又は期限切れの原材料を使用したこと、異臭や膨張等の製品異常が主な回収理由でした(図8)。規格基準違反では大腸菌群の検出事案が多く報告されていました。有害微生物の残存事案の中では、製品のカビの発生が93.0%を占めていました(図9)。
図⒏ 回収理由別報告件数(食品衛生法関連 CLASSⅡ)(令和4年度)
図⒐ 有害微生物の種類(食品衛生法関連 CLASSⅡ)(令和4年度)
CLASSⅢに分類される事案では、規格基準違反が全体の76.5%を占めていました(図10)。規格基準違反の種類別にみますと、添加物の使用基準違反が53.9%と最も多く報告されており、例えば、ジャムに使用できない安息香酸を使用していた事案、チョコレートに使用できないソルビン酸を使用していた事案等、その多くは輸入食品に関するものでした。また、次いで残留農薬の基準違反が26.9%を占めており、多くは一律基準(0.01ppm)をわずかに超過している事案でした(図11)。
図⒑ 回収理由別報告件数(食品衛生法関連 CLASSⅢ)(令和4年度)
図⒒ 規格基準違反の種類(食品衛生法関連 CLASSⅢ)(令和4年度)
①食品表示法関連
回収理由として、期限表示の誤表示・不表示が33.3%と最も多く、次いでアレルゲン誤表示・不表示22.0%、製品ラベルの貼り間違えに起因する表示違反18.2%の順でした(図12)。
CLASSⅠに分類される事案の中では、アレルゲンの誤表示・不表示が40.2%と多く、そのうちの大半(91.7%)が、小麦、卵等の特定原材料の誤表示・不表示が占めていました。また、製品ラベルの貼り間違え、日本語以外の言語による表示もそれぞれ29.4%、21.6%と多く、その大部分がアレルゲンの誤表示・不表示の違反にもつながる事案でした(図13)。
図⒓ 回収理由別報告件数(食品表示法)(令和4年度)
図13. 回収理由別報告件数(食品表示法CLASSⅠ)(令和4年度)