基準油脂分析試験法において、過酸化物価は「油脂の酸価、過酸化物価の測定法に基づき試料にヨウ化カリウムを加えた場合に、遊離されるヨウ素を試料1kg に対するミリ当量数で表したもの」と定義されており、油脂中の過酸化物の量を示すものです。
過酸化物価の操作フローを図2に示します。試料から抽出した油脂を酢酸とイソオクタンの混液に溶解し、飽和ヨウ化カリウム溶液を加え反応させた後、チオ硫酸ナトリウム標準液で滴定します。試験法の原理は次式に示すように、酸性溶液中で過酸化物が過剰に加えたヨウ化カリウムと反応し、ヨウ化物イオンを酸化してヨウ素を遊離させます。過酸化物の量が多いほど遊離するヨウ素も増加するため、ヨウ素をチオ硫酸ナトリウム標準液で滴定することにより、過酸化物の量を測定します。
R-OOH+2I-+2H+→R-OH+I2+H2O
I2+2S2O32-→S4O62-+2I-
図2 過酸化物価の操作フロー
酸敗した油脂中に存在する過酸化物は主としてヒドロペルオキシドで、それに環状ペルオキシド、ペルオキシ基で結合した重合体、過酸化水素なども含みます。ヒドロペルオキシドは油脂の自動酸化反応における第1次生成物なので、過酸化物の測定は変質の程度を知る有力な方法です。しかし、過酸化物は安定なものではなく第二次、第三次生成物に変化していきます。特に熱、光、重金属などの作用によって分解速度が大きくなるため、加熱した油脂や変質程度の進んだ油脂おいても過酸化物価は低いことがあります。