食品検査を自社で実施あるいは第三者機関にご依頼される際、どの部位を検査対象としどの部位を除去して検査を行うかを明確にすることは非常に重要であり、検査結果に大きく影響する。バナナを例にしてみると、微生物検査の場合、皮を含めて検査した場合と皮を除いた後のいわゆる「可食部」のみを検査した場合では、結果は大きく異なってくる。前者に比べて後者の方が圧倒的に生菌数は少ない。また、栄養成分分析の場合、皮を除いた可食部を検査するのが一般的である。ところが、安全性確認のための残留農薬等の検査の場合、検体は果柄部を除去したものと食品、添加物等の規格基準(昭和34 年厚生省告示第370 号)第1食品 Aの部 食品の成分規格(以下、「厚生省告示第370号」という。)に表現されているため、果柄部を除いた後の皮を含めて検査することになる。
このように検査目的によって一般的に除去する部位を検査部位に含める場合と含めない場合があり、あらかじめ除去して欲しい部位を正確に伝えることは非常に重要である。バナナの皮、精肉の筋、魚の骨などであれば誰でも簡単に理解できるが、農畜水産物の部位名には専門的でわかりにくい名称もあり、正確に伝えにくい場合がある。『しいたけのあたまの部分は「傘」、「傘」を支えている部分は「柄」、では、地面や原木に接している「柄」の下部の名前を何というでしょう』のようにクイズの問題になるくらいである(答えは、「2.農産物の部位名の一例」を参照)。そこで本稿では、厚生省告示第370号や日本食品標準成分表で示されている農畜水産物の部位の名称についてその一例を紹介する。