消費者からの異物の苦情は、社会的信用を著しく損なう非常に大きな問題に発展する危険があります。特に近年のSNSによる情報の拡散性は高く、写真付きで投稿されたクレームが瞬く間に波及してしまう事例が散見されます。
東京都福祉保健局によると、2019年度の食品の苦情件数は4849件、その内訳で異物混入件数は660件と報告されています(図1参照)。苦情件数は2014年度をピークに減少傾向にあり、異物混入件数も2014〜2015年度は約1000件/年で推移していましたが、2019年度は660件と減少しています。これは、異物クレームに対する企業の危機意識の高まりから、様々な対策を徹底した結果、異物混入した製品が消費者に届くのを予防できたと推測できます。
しかしながら、原料の管理から出荷に至るまで異物混入のリスクを完全に排除することは非常に難しいものです。対策には、過去の事例を参考にして、異物混入が起きやすい工程を重点的に見直す方法が効果的です。
そこで今回は、当財団で実施した異物検査事例をもとに、異物混入が疑われた際の適切な対応と、その後の対策について概説します。