食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されている。 厚生労働省は、食品添加物の安全性評価に基づき、人の健康被害を引き起こすおそれのない場合に限り添加物の使用を認めており、その認められた食品添加物を指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物に分類している。一方、使用が認められていない添加物を「指定外添加物」と呼ぶ。 今回の豆知識では、この指定外添加物の一種であるTBHQの試験法について紹介する。
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第二理化学検査室
食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されている。 厚生労働省は、食品添加物の安全性評価に基づき、人の健康被害を引き起こすおそれのない場合に限り添加物の使用を認めており、その認められた食品添加物を指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物に分類している。一方、使用が認められていない添加物を「指定外添加物」と呼ぶ。 今回の豆知識では、この指定外添加物の一種であるTBHQの試験法について紹介する。
TBHQとは、油脂類の酸化防止剤であり、白色〜わずかにうすい褐色の結晶性粉末である。エタノール及びアセトンに溶けやすく、水にほとんど溶けない。欧州など世界的に使用が許可されている酸化防止剤であるが、日本では使用が認められていないため、TBHQを含む食品の輸入・販売が禁止されている。輸入したスナック菓子やビスケット、魚油などから検出することもあり、違反事例の多い添加物の一つである。
以前は酸化防止剤であるBHTやBHAと同時分析可能な試験方法1)が示されていたが、より感度の良い試験法が確立されたため、平成17年に厚生労働省よりTBHQ試験法が通知された2)。通知に示されているTBHQ試験法のフローを図2に示す。
性状の異なる食品別に試験法が示されており、アセトニトリル又は酢酸エチルでTBHQを抽出後、ヘキサン洗浄により油分を除去し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定する方法である。抽出操作は、液体試料(植物油及びオリーブ油、ごま油等)についてはTBHQの酸化による減少を抑えるためにL-アスコルビン酸パルミチン酸エステルを含むアセトニトリルで抽出を行う。液体試料以外の試料においては、不要な水分を硫酸ナトリウムで脱水しながらアセトニトリル又は酢酸エチルで抽出する。抽出後の操作は、ヘキサン/アセトニトリル分配により不要な油分をヘキサン層へ除去し、アセトニトリル層をHPLCにて測定する。
測定には蛍光検出器付きHPLCを用い、励起波長293 nm、蛍光波長332 nmで測定する。HPLC測定においてTBHQの定性判断に疑義が生じる場合はガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)、または、ガスクロマトグラフ水素炎イオン化検出器(GC/FID)により定性確認を実施する。クロマトグラムにおいて、試料溶液のピークとTBHQ標準溶液のピークの保持時間が一致すること、または、マススペクトルを比較し、TBHQとフラグメントパターンが一致することで定性確認とする。
欧州ではTBHQの食品への使用が認められており、油脂または油分に対して使用基準が設定されている。しかし、日本ではTBHQの使用は認められていない。このように国によるTBHQの取り扱いが異なるため、海外の規制に適合するTBHQ含有食品が日本へ輸入された場合は、食品衛生法違反となるため注意が必要であり、分析による監視が重要である。