殺虫剤とは農作物を害虫から防除する目的のために使用する薬剤であり、農薬取締法において農薬と定義されている一種である。殺虫剤は、害虫が殺虫剤に接触したり、呼吸により吸い込んだり、殺虫剤が散布された植物を食することにより害虫の体内に侵入する。その後、害虫の「神経系」、「エネルギー代謝」、「生長制御」※1などに作用し、死に至らせる効果を示すものである。作用機構の違いによって以下のグループに分類される。
・「神経系」に作用する殺虫剤
人も同じであるが、虫は触れたり見たりして受けた刺激をシグナルとして脳へ伝達し、さらに脳から行動を支持するシグナルが手足などに伝達されることで行動を起こすことができる。このグループに属する殺虫剤は、神経系での伝達を阻害することで、害虫を死に至らせる。作用する神経系の場所は様々だが、多くの殺虫剤はこのタイプであり、一般的に速効性がある。
・「エネルギー代謝」に作用する殺虫剤
虫は、呼吸によって取り入れた酸素をエネルギーに代えて活動している。このグループに属する殺虫剤は、エネルギーの合成過程を阻害することで生命維持のエネルギーが枯渇し、死に至らせる。
・「生長制御」に作用する殺虫剤
昆虫の表皮はタンパク質とキチン質を主成分としており、この表皮はヒトなどの皮膚とは違って硬く、脱皮を繰り返しながら成長する。このグループに属する殺虫剤は、脱皮や変態のタイミングを乱し、不完全脱皮や早熟変態を引き起こし、死に至らせる。または、表皮の成分であるキチンの生成を阻害することで死に至らせる。これらは、昆虫特有の機能に作用するため、ヒトには低毒性である。