異物同定をするうえで大切な初期確認とは

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC

FQS(Food Quality Solution)室

異物が見つかったとき、「とにかく早く原因を知りたい」、「でも、何から手を付ければよいか分からない」と感じた経験はないでしょうか。実は、異物同定のスピードや精度は、初期確認で得られる情報の質に大きく左右されます。

本稿では、特別な検査機器がなくても現場で実践できる異物の初期確認のポイントを、顕微鏡観察と簡単な試験について紹介します。なお、本稿でいう「顕微鏡」には、実体顕微鏡のほか、デジタルマイクロスコープなどの拡大して観察する機器を含みます。

1. 異物の取り扱い時の注意点

異物を顕微鏡で観察するだけであれば、通常、異物そのものが失われることはありません。一方で、「3. 確認するべきポイント」で紹介する物性の確認と「4. 現場でできる簡単な試験方法の例」は、異物に変化を与える場合があります。異物は同一のものを再度入手できない、極めて貴重なサンプルである場合が少なくありません。そのため、異物の試験への使用可否は、事前に社内やお客様と共有しておくことが必要です。使用の許可が得られた場合でも異物の全量を使い切らず、一部を保管したうえで、少量ずつ使用するようにします。また、異物は破損や紛失を防ぐため、発見時の状態をできるだけ保持したまま、密閉容器などに入れて保管することをおすすめします。さらに、テープで異物を固定すると粘着成分が試験に影響する場合があるため、注意が必要です。

2.顕微鏡観察で得られる情報とは

顕微鏡観察では、異物の材質や発生源を推定するためのさまざまな情報を得ることができます。異物を顕微鏡で見たときにわかる色調、形状、表面の状態などは、異物の材質や発生源を推定するうえで非常に有力な手がかりになります。例えば、繊維状であれば作業着、手袋、フィルターといった衣類・資材由来の可能性、均一で滑らかな表面であれば樹脂の可能性、不規則な形状であれば食品由来や炭化物など、観察だけでもある程度の方向性を絞ることができます。

3. 確認するべきポイント

顕微鏡観察では、見た目の特徴、形状や寸法、素材や発生源を推測する手がかりを確認します。加えて、異物に付着している物質や汚れも確認します。これらは、発生源を推定する重要なヒントになります。

 

顕微鏡観察では、特に次の3点を意識します。

▶ 見た目の特徴

・色調(単色/ムラ)

・光沢の有無、透明感(金属光沢/ガラス様/樹脂様)

・表面の状態(滑らか/粗い/ひび割れ)

 

▶ 形状や寸法

・繊維状/粒子状/板状

・大きさ、厚み

 

▶ 素材や発生源を推測する手がかり

・単一素材/混合物

・先端や断面の状態(切断面があるか/自然破断か)

 

次に、水を滴下したときの状態、押したときの硬さや弾性などの物性を確認します。これらは、樹脂、金属、ガラス、生物由来などを判別する手がかりになります。

 

物性の確認の例は以下の通りです。

▶ 水を滴下したときの状態

溶ける、浮く、沈む、膨潤するなどの挙動や、油状感の有無から、水溶性か、油様か、非水溶性かといった判断材料を得ることができます。

 

▶ 押したときの硬さや弾性

柔らかく変形するのか、弾性があるのか、あるいは脆く割れるのかといった違いから、樹脂、ゴム、ガラス、炭化物(焦げ)などの区別に役立ちます。

4. 現場でできる簡単な試験方法の例

観察に加えて、現場で実施できる簡単な試験を組み合わせることで、異物の性質をより詳細に確認することができます。

 

試験方法の例は以下の通りです。

▶ 加熱したときの変化

異物をスライドガラスや金属板などの上に載せ、ホットプレートで加熱します。溶融する、焦げる、煙が出る、形状を保つなどの違いから、有機物か無機物か、また熱可塑性樹脂か熱硬化性樹脂かの推定が可能です。また、樹脂の種類によっては、燃焼時に特徴的な炎色を示す場合があります。例えば、緑色の炎を示す場合、塩素を含む可能性があり(炎色反応)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの塩素系樹脂が候補として考えられます。ただし、炎色反応のみで材質を断定することはできず、あくまで参考情報として扱う必要があります。

 

▶ 磁性の有無

見た目の特徴に金属光沢があり、磁石に反応する場合は、鉄系材料である可能性があります。ステンレス鋼については、材質によって磁性の有無が異なる点に注意が必要です。微小な異物の場合、直接磁石を近づけると磁石に付着して回収が困難になることがあります。そのため、スライドガラスに水を1滴垂らし、その中に異物を浮かべた状態で、外側から磁石を前後に動かし、異物が追従するかを確認すると安全です。

 

▶ ヨウ素デンプン反応

デンプンの有無を確認する定性試験です。ヨウ素液(市販品)を滴下し、呈色反応を確認します。食品由来の異物かどうかを判断する一つの手がかりになります。

5.初期確認がその後の対応を左右する

初期確認で得られた情報は、異物検査における検査方法の選定、原因調査の方向性、再発防止策の精度を大きく左右します。 観察内容をもとに異物の由来や発生工程について仮説を整理することで、類似異物との比較、工場内での発生源の特定がスムーズになり、再発防止対策の検討といった改善にも直結します。

異物検査の場合、最初の顕微鏡観察の精度が高いほど、その後の検査をより的確かつ効率的に進めることができます。異物同定につながらない無駄な検査を減らすことで、原因特定までの時間を短縮することができます。

6.まとめ

異物同定において最も重要なのは、最初にしっかりと観察することです。顕微鏡による丁寧な観察と、現場で実施できる簡単な試験を組み合わせることで、異物の正体に近づくことができます。検査機器に頼る前に、まずは異物に対する観察力を高めること。それが、迅速で正確な異物同定につながります。

しかしながら、顕微鏡観察と現場で実施できる簡単な試験の組み合わせにより得られる情報には限界があります。「この異物、判断に迷う」、「初期確認はしたが確信が持てない」――そのような場合には、さらに詳細な検査を組み合わせることで、より確実な同定と再発防止につなげることができます。

 

当財団では、検体の到着日に検査結果を報告する異物検査の「特急サービス」をご用意しております。詳しくはHPをご覧ください。

https://ssl.mac.or.jp/technical/substance/